まだあなたが好きみたい


「昨日、バイト先に霧生高校の生徒が来てね、それで多分、窪川のこと話してた」



吉田たちの通う学校である。



「どこ? 昨日のいつ?」

「駅前通から一本入ったとこのファミレス。夕方になる前だから、3時ごろかな」



昨日は教師たちの研修会かなにかで午前授業だった。

多分、吉田たちの学校もそうだったのだろう。



「何人くらいの人? 男?」

「女子もいた。てか、ふたり。男一人と、女一人。カップルではなかったと思う。中性的なきれいな顔だちの男の子と、それに比べるとちょっと見劣りする黒髪セミロングの女の子」



え、それって――。


唐突に思い浮かんだ二人に、匡は思案した。

匡たちがランニングをしていた時間帯は三時半から四時過ぎ。


吉田たちがいた場所までファミレスからは五分とかからず、ファミレスでくつろいだ時間を考えればあの場に二人がいたのも頷ける。

なにより、人の造作に関するあらゆる表現を退けて、きれいという言葉にすべてを集約してしまうほどの顔立ちといえば、癪だが、有正以外には思い当たるやつがいなかった。

ただ、若干、睦美の言った見劣りという言葉に棘のようなものを感じないこともなかったけれど、女子とは得てしてどんな人にも欠点を見出し、すこしでも自らを優位に立たせようとする生き物だということは知っている。



「それって、要するに悪口ってこと?」



気まずそうに睦美は頷いた。



しかし匡は、なんだ、と思った。


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