まだあなたが好きみたい
なんということもない。
あの二人なら俺の悪口くらい挨拶のように平気でするだろう。
「あー、でもそれならだいたい見当つくわ」
「そう、なの?」
「ああ。それに俺、別にあいつらじゃなくてもそういうの気にしないから。けど、わざわざ忠告してくれてありがとな」
そう言って微笑むと、立ち去ると思ったのか、咄嗟に睦美の手が匡の袖をつかんだ。
あっ、という顔にかすかな後悔が過ぎる。
けれども、彼女は唇を引き結び、強いてそのまま続けた。
「険悪な、雰囲気だったの。あいつがいるから全部おかしくなったんだとか、もう関わらないって誓ってとか」
匡はすと目を細めた。
「それは、どっちが?」
予想はついていたけれど、一応訊いてみる。
「男の子のほう」
「それで?」
「男の子が必死に訴えてるのに、女のほうはずるずるはぐらかしてる感じだった。……窪川、なにかしたの?」
匡は眉をひそめた。