まだあなたが好きみたい
そう、これは、睦美が心配しているような話ではない。
たとえば、俺が彼女に無体をはたらいて――それはあながち嘘ではないけれど……、
だから、有正が泣き寝入りは駄目だと彼女に訴えているとか、たぶんそういうことで、俺の立場が危うくなるかもしれないなら今のうちに手を打てと、そんなことを忠告しているのかもしれない。
心外だと思わないではなかったけれど、ときどき横暴になるのはよくない癖だと、匡自身その自覚は一応ある。
睦美は俺のそういう欠点を知っている。
だからこそこうして気を揉んでくれたのだろう。
だが、吉田がはぐらかしていたのは、言いづらいことを飲み込んでいたからではなく、おそらく、恥じらいだ。
だとしたらなおさら大歓迎の展開だ。
てっきり愛想を尽かれたとばかり思っていた。
いや、もしかすると一度はそうなったかもしれない。
けれど初心な彼女にとって、もしかするとはじめてだったかもしれないキスという行為がもたらした衝撃はいかほどだったか。
不本意な余韻が長らく尾を引くうち、いつしか嫌いが醸されて好きに転じ、彼女の意識を変えたのとしたら。
二発もぶたれた甲斐があるというものだ。
だが、こうなると有正が邪魔すぎる。
どうしようと考えていると、
「窪川、その子のことが好きなの?」