まだあなたが好きみたい


多分、よくて平和に世間話ができるかどうかというレベルだろう。


好きなんて、そんな決定的な言葉を口にしてしまったらその瞬間、俺たちの関係は破綻してしまう。


漠然とだがそれがわかるから、こわくて踏み切れなかった。


だが、同時に胸がただれるほど悔しいのもまた事実だった。


いつもの俺なら、それがどうしたと跳ね除ける気概を示すところなのに。

うじうじしている自分に嫌気がする。



「そっか。窪川、本気なんだね……その子に」



そうかもしれない。

そうじゃなきゃ、こんなにいろいろ考えないし、自分を意気地なしだとも思わない。


……なんて、自分で自分の首、絞めてるし。


望むところだって?

冗談だろ。



「……おまえは、うまく行ってるのか? その、好きなやつがいるんだろ?」

「わたしは――……まだ、ちょっと、かかりそうかも」

「そうか」



微妙な間があいたことを不審に思いつつ、しかし余計なことを考えるとまた笑われそうなので、思うようにいかない進捗状況がそうさせただけだと思うことにした。


始業五分前を告げるチャイムが空っ風に蹴散らされてぼやけて届いた。


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