まだあなたが好きみたい
いや、そもそも有正がいなかったらあんな事態には巻き込まれてはいないだろうけれど、もしわたしひとりだったら言えたかもしれない。
そうしたら、どうなっていただろう。
何か、前向きな進展が、二人の間にもあったのだろうか。
わたしが可愛くないばかりに、またしても喧嘩になって。
怒りに任せて心にもないことをぶちまけて、幻滅させて。
あの場での怒りは器量の小さい大人たちに対する失望が端緒だったはずが、いつしかそのことを忘れて声を張り上げていた。
素直だったら。
自分でもよくわからないまま、こんなふうに後味の悪い暴走をせずにすんだのだろうか。
もしわたしが素直だったら。
でも有正に誓えとまで詰め寄られた直後に、窪川に気を許すような態度は取れなかった。
有正はわがままだが菜々子に指図だけは絶対にしない。
だからこれまでもおかしいと思いながらずっと言いたいことを呑み込んで静観してくれていたわけだし、何があってもわたしの味方だった。
その彼が業を煮やしたのは、さすがの彼も目に余ると判断したからだろう。