まだあなたが好きみたい
こんなところもあるんだな、と思った。
不良っぽくやさぐれたり、荒っぽく振る舞っても、ふとしたときに無垢であどけない彼が顔を出す。
試合の前、監督に叱られて不服そうに俯いていた彼をおもいだした。
「見んなよバカ!」
背けられても、菜々子はしぶとく彼の顔を追った。
飽きない顔だな、とおもう。
こんなふうにじっくり見つめたことはない。
彼女は毎日彼のこんな顔を見ているのだろうか。
そう思うと、殺意さえ芽生えた。
「誤解したお詫びをさせてあげる」
菜々子はほがらかにそう言った。