まだあなたが好きみたい


「単刀直入に言うとだな、そいつ、有正のことが好きらしいんだよ。だけど事情があってうまいこと声がかけられねーってわけだ。そこで、おまえなら有正の連絡先を知ってるだろ? 教えて欲しいと思って――って! おい! 最後まで聞けよ!」


話の途中で先が読めた菜々子は、呆れかえって、出口目指して歩き出す。


すかさず窪川が後を追い、菜々子の手首を掴む。


「なによ! わたしじゃなくて今度は有正を懐柔しようって、そういう魂胆!? あなたどこまで卑劣なの? そこまでしてわたしになんの恨みがあるっていうわけ! 冗談じゃないわ」

「うぬぼれるなよ! 誰がおまえのためだっつった。クラスメイトから相談を受けたんだよ。そいつが有正のアドレスを知りたがってんの」

「信用ならない」

「この目を見てもか!」



菜々子は窪川の双眸を覗き込み、低い声で罵倒した。



「あのときだってそんな目をしてたわよ。この、クズやろう」


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