まだあなたが好きみたい
くっと、菜々子は顔をこわばらせる。
思いがけず真摯な眼差しが菜々子を射抜いた。
「……おまえには、悪いことをしたと思ってる」
窪川は言った。
「悪ふざけでおまえの気持ちをもてあそんで、すごく、傷つけた。あんときの俺、ほんと、どうかしてたんだ」
「そうは見えなかった」
間髪をいれずに否定され、窪川はにわかに言葉に詰まった。
苦しげな表情をいっそう深くして、窪川は絞り出すように言葉をつむぐ。
「反省してる。……許して欲しい」
菜々子は窪川を見返した。
しかしやつは長い睫毛をふるわせながら目を瞑っている。あたかも沙汰を待つかのように。
反省。
彼の声はいかにも心から発せられたような切実な響きを帯びていた。
しかし。
「舌先三寸って言葉があるの、知らないの?」