まだあなたが好きみたい
「何を言ってるかまでは聞き取れなかったもの」
「はあ? なんなのそれ! わたしの勇姿を中途半端にしか見てなかったって言うの?」
憤慨する菜々子に、まあまあ、と有正は呑気に肩を抱く。
「でも菜々ちゃんがそう思うならきっとそうだよ。うん、それでいい。あんなやつと関わってるとろくなことにならないからね」
「ところでね有正、さっきあいつが嘘かどうか知らないけど、クラスメイトにあなたのことが好きな人がいるんですって。連絡先を教えて欲しいって言われたんだけど、どうする?」
いきなり有正の顔が怖くなる。
「あんなやつの言葉を信じるの? そんなの知ったことじゃないよ」
「彼女、欲しくないの?」
「大概姑息で、口で言うより即物的な女なんて興味ない。それに、もしその話が真実なら、そのクラスメイトって多分あのファミレスの子でしょ? こないだもぼくたちの給仕をしてくれた」
菜々子は顔をしかめた。
「……なんでそんなこと知ってるの?」
「前にパパと一緒に夕飯を食べに行ったとき、窪川の学校の1年だって聞いてもないのに自己紹介してきたもん。それにこないだ菜々ちゃんと一緒に行ったときのあのロコツな顔。あれって嫉妬でしょ? あーやだやだ。悋気持ちはいいけど表に出るのはマイナスだよ」