まだあなたが好きみたい

「昨日が味噌鍋だったから、今日はそれにキムチを入れて、キムチチゲっぽい鍋かな」

「いいなー鍋。ぼくお呼ばれしちゃおうかなー」



有正と歩く帰り道。

煩わされるもののない二人だけの道行き。


あれだけ悪し様に侮辱されれば、さすがにもう窪川とかかわることもなくなるだろう。



(これでよかったのよ。これで)



降りしきる雪は目に留まらぬほど細かく凍てついている。

これなら一晩も降り続ければ町を清浄の白で埋め尽くすだろう。白はすべてを無にする色だ。


星のない空。


音もなく雪は降り続く。


この雪がわたしの記憶まで消し去ってくれればいい、そう願った。


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