まだあなたが好きみたい

なにひとつうまくいかない夜に



あるはずがないと思いながら、それでもリスクを犯してまでこの場所に来てしまうのは、ひとえにあいつとの繋がりを諦めたくない、という彼の意地だった。


睦美の言葉に勝手にその気になっていたが、結局俺のただの夢想だったと気づいたことも、逆に彼の意固地に拍車をかけていた。


今日も今日とて目印らしきもののない色褪せたフェンスを腹立ち紛れにけりつけて、匡は踵を返す。


クリスマスも終わり、次々と冬休みに突入していく運動部を見送って、最後まで体育館に居残り続けた男子バスケットボール部も今日が今年の練習収めだ。

練習後に念入りに大掃除をして大晦日の夜を迎える。

三が日が明けた四日から練習を再開する。


今年はいつになくつまらない年末だ。


彼女もいないし、部活は忙しいだけであいかわらず孤立感ハンパねーし、三が日の予定もすっからかんだし。


……ありえねぇ。母ちゃんしか女がいない正月なんて、地獄かよ。


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