まだあなたが好きみたい
「こっちはもっとすごい人」
「でもそのわりに案外袋持ってる人いないね。しけてるー」
「財布ないやつが何を言う」
「へへ」
二人はにぎわうショッピングセンターをこれというあてもなく歩き出す。
ブランドショップを冷やかし、本屋に立ち寄り、好きな店の福袋を物色する。
有正が紳士物のショップが見たいというので、菜々子は待つ間、手持ち無沙汰に2階から1階の特設会場で行われている大ビンゴ大会の模様を見守る。
「吉田!」
不意に、嬉々とした声が菜々子を呼んだ。
誰だと思いながら首を捻り、菜々子は、はあ、と嘆息を吐いた。
年明け早々、有正以外で最初に会った知り合いがまさかやつとは。
「おまえも買い物か? 俺もなんだよ。どうせ暇なら付き合え」
そう言って窪川は気安く肩に腕を回す。
菜々子はそれを億劫そうに払いのけ、
「あいにく連れがおりますので」