まだあなたが好きみたい
だから、予想外に車内で遇されたとき、菜々子はギャップで生まれた衝撃をやり過ごすのがわりに早かった。
そういえば彼らはそういう人だった、と思い出したから。
そんな人だからこそ、わたしは今の高校に進んだのだ。
本当を言うと、菜々子は窪川と同じ高校に進学したかった。
窪川がいるからではなく、評判のいい学校だと聞いていたから。
でも、事情が変わった。
いくら気が乗らなくても誘いを受けると思っていた彼が思いがけず地元にこだわったからだ。
菜々子は自らの進路を断念せざるをえなかった。
言ったところで両親が反対することは目に見えていたし、これ以上彼の両親に迷惑をかけたくないという願いもあったから。
だから勉強した。
卒業式、両親は担任の手引きで窪川の両親からの挨拶を拒みきれなかったようだが、菜々子本人とはすれちがいだった。
その日から菜々子は母校の中学に一度も足を運んでいない。