まだあなたが好きみたい
悩みは尽きない、と思う
自分でも懲りないなと思いながら、されどめげずに通い詰めている窪川匡その人である。
朝靄が眠気を助長する早朝、重たいまぶたを押し開けて見えた、見慣れないその結ばれたものに、匡はすぐさまピンと来た。
総身がふるえ、目は冴えて、たちまち頭の靄が消えていく。
匡は縺れる指先でメモを解き、呼吸も忘れて、食い入るように文字を追った。
これはあくまで匡の父に対するお礼の気持ちに由来するものであって、匡本人に感謝しているわけではないというぬかりない前置きがまず厳格な筆致で綴られ、本題へと移る。
それによると、有正は現在、女性関係に関心がないため、連絡先を交換することを拒んだという。
だろうな、と匡は思った。
なんとなく、そんな気はしていた。
それでも吉田が頼めばうまいこと運ぶんじゃないかと期待したが、彼女が俺や俺のダチのために腐心してくれるようなやつじゃないことは知っているし、
有正も有正で、ひとと何かを共有することに熱くなるタイプじゃないことは、彼と数回やり取りを交わせばおのずとわかる。
匡は文を読み進める。
せっかく彼に心を寄せてくれる人ができたのに、こんなつれない結果しか返せないことが心苦しい。
でも、それだけならこんな手紙は書かなかった。
わたしはいい返事があれば目印を残すと言ったから。だから――