まだあなたが好きみたい

……軽率って、どういうことだ。

翌日、始業式が終わり、教室に戻ってきて宿題を回収している間も、匡の頭の中はそのことでいっぱいだった。


家族、と書かれていることからして、親父の車に乗ったことを指しているのだろうか? 

だとしたら問題はなかったはずだ。

事実、何も起こらなかったし、もしものことがあっても吉田のことを件の彼女だとばれないよう誘導する心の準備はできていた。

もっとも親父は滅多なことでは自分から相手を詮索するような問いかけはしない人だ。


それなのになぜ彼女は軽率だったなどと責任を感じたのか。

彼女の顔を記録している物の一切を絶対にばれないところに隠したから、親父は彼女の顔だって知らないはずだ。


(それとも吉田が一方的に勘づかれたと思ったかな)


それで身を引かなければとかんがえたのだとしたら、どれだけ良識に優れた女なのか。

幸せになれないタイプだ。

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