まだあなたが好きみたい
彼は地団太を踏んで、
「その裏じゃねーよ! おまえの腹芸に付き合うのはもう疲れたって言ってんだよ。言いたいことがあるならはっきり言え」
思案するふうに、はてと菜々子は小首を傾げる。
「別にないけど」
「そんなわけはない。―――まあ? さっきのはたしかに俺の考えが浅かったかも知んねぇ。頭に血が上って自分でもちょっとまともじゃなかった。試合もあったしな。けど、それでもおまえが今日、あの試合にいたのが100%学校の応援ってのはどうにも解せない」
言いながら、合間合間に自らが発した言葉の意味を踏みしめるように、彼は頷いたり首を横に振ったりした。コメディードラマか。
「解せないって言われてもね」
菜々子は苦笑し、それともなに? と自らの頬に手を当てた。
「そんなに言って欲しいの? 自分目当てで来たんだろって?」
すると、とたんに彼の顔がりんごのように赤くなった。
さっきより一回りほど大きく鼻が膨らむ。
「そういう言い方やめろ……。今度こそマジでキレるぞ。だいたい誰だよ、先に思わせぶりな視線を送ってきやがったのは」
「はあ? 逆上せるのも大概にしてよ」