まだあなたが好きみたい

「真野がな。あ、それともひがむの意味か? 要するに嫉妬ってこと――」

「それくらい知ってます。俺が疑問に思ったのは、睦美が尾田の何にひがむのかって話っすよ」

「何にって、尾田に彼氏ができたじゃん」

「じゃんって、先生………はあ!?」


匡は原西の胸倉を掴んでいた。


「どういうことっすか、それ。尾田に彼氏って。だってあいつは……」


有正のことが好きだったはずではなかったのか。それなのに彼氏って。

まさか、その気がないと俺を介して言われたのがショックで自棄を起こしたのか。

誰でもいい的な。

そんな。そんな破れかぶれな話があるかよ。


「どういうことって、そんなの俺が知るわけないだろ」


と、語尾に力を入れるのと一緒に、原西は匡の手を離させた。ネクタイを直しつつ、


「生徒のプライバシーに踏み込むことは、場合によっては俺たち教職者にとって致命傷なんだ。わかるだろ」

「そりゃあ、まあ。でも先生、言うわりに生徒のプライベートなことを知ってるのはどういう理由で? プライバシーに踏み込まないと知り得ない事柄ですよね」

「まあいろいろアンテナは張ってるけどね。でもほら、尾田はわかりやすいだろ。彼氏も似た手合いだしな。本人たちはこそこそしてるつもりでもばればれだ、ありゃ」

「いつから付き合ってるんすか、二人」

「俺の知ったところだと、冬休みが開けるかそこら、だな。部活帰り、仲良く手をつないで帰ってた。彼氏の友人にそれとなく聞いてみたら、そうですって。そんでそのとき、ようやくだよな、みたいなことも言ってたから、まあおそらく最近なんだろうさ」

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