まだあなたが好きみたい
どういうことだ、と教室への道すがら、匡は頭を捻った。
(傍目にも仲良くってことは、一概にやけっぱちってんでもないのか)
有正の連絡先を知りたいと頼まれたのは12月の中ほど、冬休みのちょっと前。
付き合い始めたのは最近だというからおそらく年が明けてからだろう。
だとすれば、あのときはまだ有正のことが好きだった可能性はある。
匡自身、結果を報告するのが遅すぎた自覚はあった。
(でもそんないきなり別のやつに乗り換えるほど、尾田って軽いやつか?)
仲がいいにはほどがあるだろくらいに睦美と熱い友情を築いていた彼女が、たとえばちょっといいかなくらいの男子に告白されたくらいで別の男に乗り換える……そのビジョンが見えない。
なんだか、いろんなことが食い違っている。
そう考えていくと、昨日、睦美を気にしているのかと思われたそわそわした様子もなんだかおかしい。
何がおかしいかと訊かれればはっきりと断言することは難しいが、何かが変だ。
いいって。そういう気がないならしょうがないし。何回言ったって変わらないよ
そういや昨日、尾田の反応がやけにあっさりしてなかったか。
俺は尾田が落胆する様を想像しながらやっとの思いで呼び出したのに。
……あいつ、そもそもホントに有正のことが好きだったのか?
そんな疑惑さえ脳裏を過ぎる。