まだあなたが好きみたい
(俺、……なんか、担がれてる?)
ひょっとして。
でも、だとしたらなぜ、嘘をつく必要があったのだろう。
そんなことを考え、悶々としたまま放課後を迎えた。
規則における定期面談で、中身はとくに決まっていない。
日ごろ生徒が口にできない日常生活での悩みを吐露するための場を設けるというのがその本旨である。
匡もこれは例外ではなく、あらゆる生徒に実施が義務づけられている。
(あーくそ、なんでいっつも二番なんだよ。二番は嫌いだっつってんだろ)
数字そのものも嫌いなら、部活にも行けなくて腹が立つ。
仕方ないから宿題をやって時間を潰すとか、そういうのがすごくいやだ。
俺には俺の決まったスケジュールってもんがある。
(と言いつつ、代わりに日誌を書いてやってるってのは、どうなんだ)
現在、面談中の友に頼まれたものだ。
たしかにこんなものはスケジュールには含まれていない。……だからといってなんで俺が。
それでもちゃんと書く。読めるかどうかはともかくとして。
今日の考察を無難にまとめ、匡はふと思った。
疼く胸を押さえつつ、誰もいないことを確認して、吉田にもらった黒猫のマスコットを取り出す。
その愛くるしいビーズの眸を見ていると今でもくすりと可笑しくなる。
(俺がこんなの欲しいと思うかよ)
マスコットは家の合鍵にぶら下げている。
どちらも絶対なくしてはいけないものだから――マスコットについては俺の名誉に関わる――ちょうどよかった。