まだあなたが好きみたい
その頬をふにふにとつぶしながら、
(せっかくあいつが有正に聞いてくれたってのに)
と胸のうちでごちる。
(なんか、俺たちばっか振り回された感じで、気に入らねぇな)
尾田を問いただしてみるか。それが一番手っ取り早い。
でもなぁ……、と匡は腕組みをした。
なんとなく、同じ建物内に彼氏がいる女に、事務的なこと以外で話しかけるという行為に、ためらいがある。
俺は睦美が誰と接していようと構いはしなかったが、皆がそうではないことを知っている。
だが、彼女に聞かねば真相は永遠になぞのままだ。
それならそれで表面的にはなんら問題はないにせよ、納得がいくかどうかは別の話だ。
ただ利用されたなら、何故利用したのか、そこがはっきりされないうちは匡の気が収まらない。
(尾田は、有正の連絡先を知って、何がしたかったんだろう)
そのとき、駆け足で教室に近づいてくる足音がして、匡は慌ててマスコットをエナメルにしまいこんだ。
「日誌できたか!?」
「おー、おまえの字に似せるの苦労したぞ」
「げっ! なんだよこれ! どこの国の文字!? 全っ然読めねぇんだけど!」
構うかと匡は早足で教室を後にした。