まだあなたが好きみたい
他人に対する有正の関心はあいかわらず希薄だ。
まあ、男子においてはこういう話題を女々しいと断じ、バリアを張る人も少なくないけれど、それにしたって早すぎる。
「メロンパンがごはんのあなたにはなんだって合うように感じられるのよ」
「そうでもないよ。お味噌汁は合わないもの」
「このまえ漬物には合うって言ってたのはどこの誰?」
「和食のカテゴリーは一緒でも、味噌と塩ではちがうでしょ」
「味噌汁だからいけないのかもしれないわよ。今度、味噌を舐めながらメロンパンを食べてみたら?」
「えー、そんなのしたら血圧上がっちゃうじゃない。減塩志向減塩志向」
「若いうちからなに言ってるのよ。へっちゃらへっちゃらー」
「菜々ちゃん」
と、有正が神妙な口調で呼んだ。
「なによ」
次の瞬間。
声を上げる間もなく、有正の手が菜々子の額にかかる前髪をアップにした。
「そんなんだからニ・キ・ビ、出来ちゃうんだよ」
「!」
気づいてたの!?
菜々子は赤面しつつ、フォークの柄の先で有正の手を弾いた。
「やめんかーい」
「痛ッ」
そのとき、ぶっと、斜め後方で誰かが噴き出した。