まだあなたが好きみたい
やっぱりこんな感じがベター
「今日はありがとね、俺のために気をつかってくれて」
思いがけず隣に腰を下ろした木野村に、菜々子は危うくオレンジジュースを噴出すところだった。
「そんな。誘った子たちもみんなも喜んでるから、かえってこっちのほうがお礼を言わないといけないくらい」
菜々子たちは男子4人の女子4人の計8人で、市街にあるファミレスを訪れていた。
注文の品が運ばれて、場がほぐれてきたところで、各々がトイレだドリンクだと好き勝手に席を立ち、はじめの席順も秩序をなくしはじめていたところだ。
菜々子は敢えて木野村からもっとも遠い席に座っていたのだが、彼自ら近づかれたのではその甲斐もない。
なるべく普通にと心がけるも、どうにも顔が上げられず、俯きがちにぎこちない笑みを結ぶ以外のことができずにいた。
「バレンタイン前に振られるとか、思わなかったな」
「当日じゃなかっただけマシだと思えば?」
「あー、それは、ね。うん、結構気持ち楽かも」
まあいずれにしろ悲惨にはちがいないが。