まだあなたが好きみたい
それが誤解だと、男子の前でははっきり言わないよう心がけてきた。
女子は裏を読む生き物だから、口ではそう言ってもと取られることは知っている。
だが男子は、女子に比べると言われたことを額面通りに受け取りやすい。
家事ができないことは全く自分のせいだけれど、ダメなギャップパターンだと思われるのはさすがに恥ずかしかった。
それでも、敢えてこの場で木野村に告白したのは、別に「もしも」のことを考えて心証を悪くしようとかそういう思惑があったわけではない。
ただ、木野村との間に、一方的かもしれないが、残っているわだかまりを解消したいと思ったら、もう取り繕った異性を演じるのはやめようと思った。
「欠点を口に出せるのはいいことなんじゃないかな」
いささか苦しい気もするが、どうにか菜々子に恥をかかすまいという精一杯の心遣いが読み取れる。
菜々子はつとめて軽やかに笑った。
「はは、ありがとう。欠点だらけだけどね。でもそう言われるとわたしにもなにかしら取り柄があるみたいに思えるよ」
「それは誰だってそうだよ。でも意外といえば意外だな。吉田さんはもっとこうおとなしくて、マメで、器用な人なんだって勝手なイメージがあったから」
「よく言われる」
「俺はいいと思うよ」
菜々子はどうにか顔を上げて礼を言った。
「ありがとう。でも、これは木野村くんのための集まりでしょ? なんでわたしが励まされてるの? 好きならもっとケーキ注文しなきゃ。そのために食べ放題の日を選んできたんだし」