まだあなたが好きみたい

二週間に一度、決まった曜日に、このファミレスではケーキ食べ放題のサービスを実施している。

食べ放題というのももちろん魅力だが、とりわけ何がいいかと言えば、衛生面と陳列状態を保つために、店員がいちいち注文を受けて運んでくれるシステムになっていることだ。

おかげでケーキはいつも適温に冷えていて、出来立てのように艶々だ。

一緒に専用のメニューを覗き込む。


「じゃあ俺、イチゴのタルトとモンブラン、レアチーズケーキ」

「わたしはレモンタルトとロールケーキにする」


注文を終え、菜々子は手持ち無沙汰にコーヒーを啜りつつ、所在なげに周囲の客たちを眺める。

そんなとき、隣でアイスティーを飲んでいた木野村が言った。


「今日、ほんと言うと、俺、最後まで来るのためらってたんだ」

「来づらかった?」

「うん」


まあ振られたばかりだしな、そっとしておいて欲しいというのが本音だと言われてもわたしは驚かないよ、と思うと、案の定、木野村は言いにくそうに顔をゆがめ、


「だって俺、吉田さんのこと傷つけたし」


と言った。

< 302 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop