まだあなたが好きみたい
は?
菜々子は眉をひそめた。
「傷つけた? え、いや、そんな」
「ううん。それに今日、吉田さんが幹事だって聞いて、俺、相当うぬぼれてたんだろうけど、もしかしたら吉田さんが俺のことをそうだからかもって思ったんだ」
えっと……、菜々子はますます困惑して、焦りを誤魔化そうとコーヒーを飲んだ。
どういうことだろう。
恥じ入るように木野村が言った言葉を反芻する。
やがてようやく事情を飲み込むと、菜々子は今度ははあと感心した。
皮肉ではない。
そういう考え方もあるのかと思ったのだ。
おめでたいというか、なんというか。
だって、傷つけたのはどう見てもわたしのほうだから。
うぬぼれていたのだって…わたしだけだと思っていた。
有正の言葉を真に受けたわけではないけれど、あのあと彼がこの集まりに参加すると知ったとき、近田の顔を立てる気遣いのほかに、まんざらでもなくそういう下心があるからじゃないかと勘ぐった。
……でもまさか、彼もそれとまったく同じことを考えていたなんて。
木野村は菜々子が自分に気持ちを寄せつつあったのではないかと懸念したのだろう。
それが今日まで続いていて、だからこの会のセッティングにも助力を示したと。
でも彼自身はどっちつかずな菜々子に業を煮やして別の女性に切り替えた。
そういうことがあったから。
……だから、自分にその場に行く資格はないんじゃないかと、友情と道理の間で迷ったのだとしたら。
そんな思考の運び方までそっくりで、菜々子はなんだか不思議な気持ちだった。
「でも、やっぱり俺の思い上がりだったみたいだね」
「うん、…ごめん」