まだあなたが好きみたい
有正と、そして秘された過去
思いがけず楽しかった慰めパーティもお開きとなり、メンバーで唯一電車通学の菜々子は夕映えの眩しい電車に揺られて帰路の途についていた。
すっかり木野村とも仲良くなって、笑顔が見られて、近田も嬉しそうで、ほんとうによかった。
始まる前はどうなることかと思ったけれど、杞憂に終わって何よりだったと思う。
会の余韻に浸りながら最寄り駅までの残りの駅をとりとめもなく数えていると、不意に妙な視線を感じ、菜々子は現実に引き戻された。
しばらく待ったが視線は途切れる気配を見せず、それどころかますます無遠慮になっていく眼差しを、菜々子はついに無視しきれなかった。
白けた気分で首を捻った次の瞬間、菜々子は夢から覚めたようにぎょっと目を剥いた。
黒縁眼鏡を夕明かりが黄金色に縁取っていた。
「どう、して」
固まる菜々子に、その人はにんまりと口角を上げていかにも胡散臭く微笑んだ。
「久しぶりだね、吉田さん」