まだあなたが好きみたい
「……どういう意味ですか?」
「どうすれば君はそれほど彼を懐かせることができるんだ?」
「幼馴染だからです。それ以外に理由はありません。それより質問に答えてください。興味ってどういうことですか」
男が男に興味を抱くとはどういう意味か。
菜々子は十分に暖かいはずの車内で寒気を感じながら詰問した。
眼鏡はにんまり笑うと、あたかも蛇が這うように、菜々子の肩に手を乗せた。
そして緩慢に顔を近づけると、頬が触れ合うほどに耳元へ唇を寄せ、囁く。
「彼を取り込みたいんだよ。そのために君に協力して欲しいんだ」
不穏な予感に菜々子はバッと身を引いた。
なんだこいつ。どうやらただの気色悪い変態ではないらしい。
それよりもっと性質の悪い相手であることを察した菜々子は、剥き出しの嫌悪を放出して男をにらみつけた。
しかし男はいくら菜々子に凄まれようと痛くもかゆくもないとばかりに肩をすくめ、
「君に拒否権なんてないよ」
眼鏡はブリッジを押さえつつ、すべてを見透かすかのようにレンズの奥の瞳を怪しく光らせた。
「俺は知ってるんだ。君の、中学時代の秘密を、ね」