まだあなたが好きみたい
暗雲を引き寄せてるのは
「そうだ。だからそれは、俺がいかに信頼されてるかってことを如実に示してるだろうが」
いかにも強がって胸を張る彼を、菜々子はいたって平淡な眼差しで見つめ返す。
「文句あるかよ」
「文句なんかないけど。ていうか、だからね、わたしはじめから言ってるじゃない。期待されてるんだねって。よかったねって。おめでとう」
「……バカにしてるだろ」
きょとんとする。
「だからどうしてそうなるかな」
「口ではそう言っても、腹ん中では、今の学校だからそうやってふんぞり返ってもいられるけどね、って俺をおちょくってる。スケスケなんだよ、てめぇの考えてることなんざ」
「そう見えるならそう見られないようにはじめからもっと上の学校に行けばよかったじゃない。もっともわたしは見てないけどね?」
「うそだね」
「うそじゃないってば」
「いいや、うそだね。うそに決まって――」
「うるさい」
笑顔で言い放つと、またぞろ面食らったように彼は口をつぐんだ。