まだあなたが好きみたい

(そうか、もう一歳は、なったんだよな)


不意に、板谷の彼女にできた、父親不明の子供のことを思い出した。

もちろん、見たことはない。腹が膨れる前に彼女は両親の勧めで学校を去った。

今どうしているか、俺に知る術はない。

ただ、出産を決めた、ということだけは聞いている。

無事に生まれたかまでは知らないけれど。

14歳という若さでの出産はまだまだ危険だと言われている。

しかし、堕ろすことについては意外にも彼女の両親もその祖父母も揃って反対したそうだ。わりに裕福な家庭だったからそういう判断ができたのだ。

中絶すれば、なにより身体に傷がつく。

産むことももちろん命の危険を伴うが、それ以上に彼女の尊厳や名誉に関わるということに家族は重きを置いたらしい。

もし何事もなく子供が産まれていれば、ちょうどあの子くらいなのだろうか。

今日はママ友たちと来ているようで、その場に父親らしい姿はないが、家に帰ればその人はちゃんと同じ場所に帰ってくるにちがいない。

そう思うと、今でも胸が張り裂けそうだった。


……それは、馬鹿げた賭けの、重すぎる代償。


――高潔、吉田菜々子は、どこまでお人よしになれるのか。


特別学級のやつと匡、正反対の二人を使ってあいつの化けの皮を剥いでやろうという、人の心理を利用したクソゲーム。

なおかつその報酬として、負けたやつは自分の彼女を仲間に差し出すこと、

それが賭けの条件だった。

< 314 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop