まだあなたが好きみたい
『わたしで、よかったら……』
今ほどひねくれていなかった有正の言う純真な少女は、あの日、窪川の嘘の告白を鵜呑みにすると、ほのかに頬を赤く染め、交際を受け入れた。
今思えば、あのときから、俺の中にあいつの存在があった気がする。
もともと、雰囲気がいいなとか、ちょっと可愛いかも、みたいな思いはあった。
でも好きだとか、付き合うとか、そういう気持ちに押し上げてくれるほどの魅力はなかった。
彼女では、俺の隣に置いておくのには弱かった。
当時から匡は人気があった。
名実ともに有名だった俺は、その彼女の存在にも多くの注目が集まった。
女の良し悪しも、俺という個人を評価するのに大事なポイントの一つだった。
今ならそんなふうに思ったりしないけれど、あの頃はきっと、自分でもわかるほど、性格が悪かったんだと思う。
周りを取り巻く毒に当てられていたのだ。
だから――。
『なんだ、おまえもやっぱり所詮、そのへんのやつと一緒なんだな』
嘲笑うような、冷ややかな口調で、当時の俺が吉田に向かって放った言葉。
『人の真価を見極めるーみたいな潔癖な感じでいて、実はけっこー安っぽいんだな。くだらねぇ』
そして俺は嗤ったはずだ。
俺がおまえなんか好きになるわけねぇだろ。
そう言って。