まだあなたが好きみたい

そうしてまず吉田の心を踏みにじると、次いで中田たちはあいつの元へと急いだ。

邪気など持ちようのない、彼のうぶな心をへし折ると、腹がよじれるまで嗤ったのだ。


だが、心から楽しかったのは中田と多村の二人だけだったろうと思われる。


唯一、吉田が匡に惹かれないほうに賭けた坂谷は、彼女を差し出すしかなかったからだ。

果たして それ は行われた。

だが、匡だけはその異常な行いから免れた。

なぜなら。

ちょうどバスケ部伝統の遠征練習が重なったのだ。

匡の遠征が終わってから実行されるはずが、若さゆえの忍耐不足とそれを上回る欲求で、彼が戻ってくるまでのほんの数日を待つことができなかった。

無理もない。

まして、ヤれるやつがすぐそこにいてできないのは中田の主義に関わる。

中田は仲間と対等でありながらいつも主導権を握っていた。

賭けに負けた坂谷に逆らう権利などなく、多村は金魚の糞だったから、中田がやると言ったらそれまでだったはずだ。

それでも坂谷はおそらく言っただろう、窪川が帰ってくるまで待とう、と。そうすれば彼女を逃がす算段が立てられたかもしれない。

だがそんなことは、中田はきっとお見通しだったにちがいない。

しかし、本当の意味で、どこまで先を見通せていたかは怪しかった。


現に女は妊娠したし、情緒を逸脱したあいつは親と教師に告げ口をした。

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