まだあなたが好きみたい

スカウトを断って地元の高校に入ったのは自分の実力を誇示したいという思惑も確かにあったけれど、

そこにはもしかすると本人も知らぬうちに、この場から離れられない、何か目には見えないものに支配されているからなのかもしれないと、匡は折に触れてそんなことを思う。

当時の悪夢は今なお匡のもとを去ってはくれない。

罪も消えない。

でもここを離れようとは思わない。

……離れたいとは願うけれど。

俺はこの場を離れてはいけないような、そんな思いにかきたてられる。

記憶は俺の海馬に刻み付けられたまま、褪せることがない。

それなのに、俺にとっては地獄でしかない記憶を呼び覚まさせる吉田のことを、遠ざけるどころかあのころ以上に好きになって待ち伏せたりしているというのは、どういうことなのだろう。

悪魔のいたずらか?

いや、ちがう。

これは俺の意思だ。

だからこそ戸惑う。どうしてそうなったのだろう。

わからないけれど、あいつに会うとちょうどこんなふうに、なんでもない魚の群れを追っているみたいに、不思議と目が離せないのだ。

胸が疼いて、苛々して、それなのに妙に安らぐ矛盾した感覚。

またしばらく会っていないけれど、あいつは今頃何をしているだろう。期末テストに向けてがつがつ勉強をしているんだろうか。

匡の脳裏に例の黒猫のマスコットが浮かぶ。

唇を噛み締め、


(これこそ悪魔のいたずらだろ)

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