まだあなたが好きみたい
隙をついて、菜々子は顔を近づけた。
さらに険しく眉を寄せると、彼はわかりやすくひるんでぐっとあごを引いた。
「そう見えるのは結局自分がそうしなかったことを悔やんでるせいでしょ? 人の顔に難癖つけるのにかこつけて誰も思ってもいないことをことさらに取り立てて過敏に反応して騒いで、何がしたいの?」
「俺が思ってるんじゃなくておまえが思ってるんだろ! 勝手に履き違えるなよ」
「勝手なのはそっちでしょ」
さすがの菜々子も我慢できなくなってわずかに語気を荒げた。
「そうやって無用な理由づけで相手を責め立てようとするのは、そうすることで今の自分を正当化しようとしているだけなんじゃないの? たのしいの、それ?」
侮蔑するような視線を投げられて、彼は唇を引き結んだ。