まだあなたが好きみたい

「誰すか? 顔は見たことある気がするけど」

「春日井だろ、一組の」

「ふうん」

「わかってないだろ」


匡は肩をすくめる。


「一組じゃあ俺らと利用する便所もちがうし、整列も遠いし。俺、基本クラスと部活しか人の名前って覚えないんで」

「文化祭とかも一緒に回ってなかったか? 後夜祭の花火も隣同士だったように俺は記憶してるけど」

「……どうしてそんなの見てるんすか」


若干引き気味の匡に、原西は信じられないとばかりに言った。


「生徒の青春をつぶさに観察できるのが教師の特権だろ。俺の学生生活はおそろしく華やかさとはかけ離れていたんだよ」

「彼女いなかったんすか」

「中高男子校の野球部出身だからな。毎日右を見ても左を見ても男男男、たまに出くわす女だっておばさんとばばあとおばさんだろ? ときめけってほうが無理だよ」


たしかに。悲惨だ。

だがそれより、


(文化祭で、一緒だった?)


え? と匡は眉根を寄せる。

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