まだあなたが好きみたい
そのとき、匡はひらめいた。
水槽の明かりを取り込んで、彼の瞳が神秘的な色合いに輝く。
かと思いきや暗い翳が帳を落とす。
(……尾田は、誰かに頼まれて有正の連絡先を聞きに来たんじゃないか?)
それならつじつまが合う。
疑問は残るが、彼女が俺を頼った理由として十分だ。
だとしたら誰に頼まれたんだ。
匡の脳裏に尾田を呼び出した日のことが思い出される。
匡が無念そうに詫びたときの、あの、尾田のやけに淡泊な反応。
それをいぶかしんだ去り際の一瞬、俺は、渡り廊下で誰かに会わなかっただろうか……。
「見ろ窪川、クマノミだ! 鮮やかだなぁ~」
原西のはしゃいだ声に吊られて顔を上げた先、反対側から水槽を覗き込む一団の中に、匡はその人を見た。
睦美……。