まだあなたが好きみたい
まちがってない、と言って
「パパは牛乳屋。パピア、あれちがう……パパはぎゅー……ぱ、ぱー」
「パプアニューギニア」
「そうそれっ! ん?」
本屋からの帰り道、有正は授業中にふと頭に浮かんだ早口言葉を思い出そうと努めていた。
パパは牛乳屋から始まる早口言葉があったのにそこから先が出てこなくて、今日は一日もやもやだった。
そんな折、いきなり後ろから答えが飛んできた。
有正の驚く顔を期待した男は、驚くどころかむしろポーズを決めて高らかに叫んだ有正にずっこけた。
マイペースもここまで来ると病気じゃないか。
「独り言でかすぎるだろ」
「お風呂に入ってるとき、歌うでしょ?」
「……それとこれとはちがうだろ」
「一人なのは一緒だよ」
「……ほどほどにしとけ」
「お風呂で歌うのもね」
「俺は歌わねぇよ」
「賢明だと思うよ」
「……失礼だぞ」
「ぼくの隣のうちの人ね、お風呂の窓を開けて入るんだよね。でもちょ~へたっぴなの。ああいうのを公害って言うんだよ」