まだあなたが好きみたい
それが叶っていれば、多分、中田はひとまずは満足だったはずだ。
有正がすべてを狂わせたんだ。
あいつがこいつを庇うから。
そのことが中田の怒りを助長したし、気に入らないものをまとめて痛めつけるための無茶でばかげた計画を打ち出した。
あの乱暴な賭け事は中田の積もり積もった鬱憤を晴らすためのオプションみたいなものだった。
「そ、そんなこと言って自分たちの罪をすこしでも軽くしようとしたって無駄だぞ。おまえたちが仕出かしたことの罪は消えない。それをぼくのせいにするなんて卑怯だ」
「ああ卑怯だな、わかってるさ。でもそれが真実だ。おまえがもっと普通にさえしてれば吉田だって女心を弄ばれずに済んだし、あいつだって衝動的に告白なんかしなかった」
直接的に吉田を傷つけたのは俺だ。
その自覚はあるし、彼女を好きだと認識してからはともすれば自責の念に駆られ、自分自身を殴りつけたい衝動に襲われる。
でも、彼らが彼女を傷つけるに至ったそこもとの要因は、有正だ。
有正が幼馴染を傷つけたも同然なのだ。
……それはあまりに身勝手で、たしかに卑怯な解釈だが――。
(でもこの賭けは、賭けとはいえまだ、建設的なもんだろ)