まだあなたが好きみたい
日は落ちて、頭上の青白い外灯が照らす匡たちは、お互いが紙のような顔色だった。
とくに有正は悪かった。
目が泳いでいるのが、伏し目がちにもよくわかる。
「あいつを落としても、おまえが間に入られると困るんだよ。あいつはおまえに弱いからな。だから先におまえに会いに来たんだ。俺はおまえの協力が欲しい」
「どの面下げてそんなこと言うんだよ。菜々ちゃんはもうおまえとは会わないんだってば!」
「あいつの意思なんて関係ない。俺は俺のやりたいようにやる」
「また、そんな、横暴。許さないよ」
「あいつが幸せになるところを見たくないのか?」
有正はぐっと言葉に詰まった。
「お、おまえが菜々ちゃんを幸せになんかできっこないだろ!」
「やってみないとわからないだろ。あいつの俺に対する評価はすでにどん底なんだ。だったらいっそ楽じゃないか。後はそこから這い上がるだけだろ」
「口では何とでも言えるよ」
「だったらおまえは口出ししないで黙って見てろ。それがあいつのためだってことを、俺が必ず証明してみせる」
匡は挑戦状を叩きつけるように言い切ると、風を切るように颯爽と有正の脇を通り過ぎた。
一か八か。
この一手にかかっている。
今の話を聞いて、またしても有正が彼女に泣きつくか、それとも内なる男を奮い立たすか。
前者なら、俺は今度こそ彼女に見切りをつけられるだろう。
だが、もし後者なら――。
匡は、気を抜けば、うっかり戻してしまいそうなほど乱れ狂う鼓動をできるだけ意識しないよう努めながら、強いて普段どおりの足取りで帰路を進んだ。