まだあなたが好きみたい
ほんとうとか、愛とか、正義とか
匡を無視するのは、彼を蔑み憎んでいるやつの中ではあたりまえのことかもしれない。
けれど、やつにはめずらしいだろう道を、この時間、妙に思い詰めた顔をして歩いているのを見れば、見過ごすわけにはいかなかった。
匡は向きを変え、数歩はなれてやつの後を着いていく。
しかし一向に反応する気配はない。
匡は怪訝そうに眉をひそめた。
俺に気づかなかったのか?
いや、そんなはずはない。やつはああ見えて意外と鋭い男なのだ。
だとすれば。
(吉田になんかあったか?)
そう思うと矢も盾もたまらず、匡は大またで一気に有正との距離を詰めるや否や肩を掴んだ。
「おい」
どうした、と言いかけた匡は次の瞬間、何が起こったのかわからなかった。
何かすごい力で突き飛ばされたみたいに、匡の腕が弾かれた。
だがおどろいたのはそれだけではない。