まだあなたが好きみたい

腕を庇いながら顔を上げた途端、双眸に飛び込んできた有正の眼差しに息を呑む。


「おまえ、どうしたんだその顔。ひどいぞ」


有正の顔は、お化けもかくやというほどに真っ白だった。

匡に気づいてか、有正は忌々しげに軽く舌打ちをすると、勢いよく顔を背けた。


「お、おまえには関係ないだろ」


吐き捨てた一声に、匡はすと目を細める。

いつもの冴え渡る皮肉さがない。

そのことがかえって匡の胸騒ぎを確信へと導いた。


「なんかあったのか? 吉田は大丈夫か?」

「はあ? なんでおまえが菜々ちゃんの心配なんかするんだよ。心配されるほうが菜々ちゃんにとっては屈辱だ」

「なんでだよ。いいだろそんくらい。心配されるだけありがたいじゃねぇか」

「ふん。どうだか。それだって結局は下心から来てるんだろ。わかってるんだからな」


確かにおかしい、と匡は足元へと視線を落としながら得も言われぬ焦燥感を覚える。

あの有正が、貧乏ゆすりをしているのだ。

本人は気づいていない様子だが、だとしたらなおさら不穏である。

彼がこれほど目に見えて神経を圧迫されているなんて、これまであっただろうか。


「来てたとしても当分手出しなんかしねぇよ。なあ、吉田になんかあったのか?」

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