まだあなたが好きみたい
(だけど、ザンネンなことに知り合いに有正と同中のやつがいなくて、俺に助力を求めたいけど、元カノって立場が邪魔をして遠慮したんだとしたら、尾田が代わりに嘘をついてたってことは十分ありうる)
だとしたら――。
やばい予感に我に返ると、たしかに掴んでいたはずの有正の腕を思案にふけている間に離していたことに気づき、匡はうろたえた。
消えた!?
「おい、有正!」
慌てて名前を呼び、しかしすぐにもその必要のなかったことに気づく。
やつはすぐ目の前にいた。
暗色の外套とマフラーが闇に紛れて見えづらくなっていただけで、有正はちゃんとそこにいた。