まだあなたが好きみたい
ほっとしたものの、匡は小首を傾げた。
俺が油断して手を離したのだとしたら、何ゆえそのまま逃げなかったのだろう。
これ以上迷子になるのが怖かったのか?
いずれにしろまだそこにいてくれてよかった、と駆け寄ろうとしていきなり抱きつくように迫ってきた有正に血の気が引いた。
自他共に認める綺麗過ぎる顔立ちゆえ、張り詰めた青白さがそれにいっそう磨きをかけて、大女優ばりの魔性を思わせる。
しかしこの近さは、ない……! いくら綺麗でも、こいつは男だ……!
「お、おまえはバカか!」
総毛立ちながら匡は言うが、すがるようにダウンを掴む有正は哀れなほどで、冷たく突き放すことはできなかった。
やがて有正は、戦慄く唇から、不自然に割れた声を絞った。
「あ、あのホテル、に、お、女が、いる。菜々ちゃん、じゃない。別の、おまえの、学校、だ。名前は、真野」