まだあなたが好きみたい

匡は息をのんだ。


「真野、そう、睦美。ファミレス、で」

「どういうことだ! 睦美をどうしておまえがホテルになんか!」


胸倉を掴まれても有正はなされるがまま、魂の抜けた顔で言葉を続ける。


「おまえも、知ってるはずだ。電車で菜々ちゃんが会った、眼鏡のやつ。あいつだ。あいつに、頼まれた。あいつは、睦美って子に、用があるらしい」

「てことはなにか、おまえは睦美がおまえのことを好いているっつーその気持ちを利用して、睦美を眼鏡の元に連れて行ったのか?」


まるで誰かのことじゃないかと、気づきながらも匡はそれを棚に上げて詰った。

すると有正も、自分だけが怒鳴られる立場にはないはずだと思い出したように、鋭い目つきで匡の手を弾いた。


「ぼくは、おまえとはちがう。これは、正当な、正義だ。そうだ。ぼくだって、ぼくにだって、守れるんだ、から」


守られてばっかじゃ、ないんだ……!

< 356 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop