まだあなたが好きみたい
唐突に、なにかを決別するように有正は叫ぶと、次の瞬間、コートを翻すように回れ右をして、そして、
「あっ、おい!」
脱兎のごとく駆け出した。
咄嗟に手を伸ばすも指先をかすめただけで捕らえきれず、有正の姿はあっという間に闇へと消えた。
匡はチッと舌を鳴らした。
(睦美)
匡は有正の消えた道を一瞥した。
くそっ、と吐き捨てた声が団地の静寂に木霊する。
迷っている暇はなかった。
匡はもがくようにマフラーをはずすと、来た道を全力疾走で駆け戻った。