まだあなたが好きみたい
悪魔はついて回る
ホテルに着いても、部屋がわからず難儀するかと思いきや、それは存外簡単に見つかった。
そこだけドアが開いていた。
目印のようなストッパーがかけられているのに気づいたとき、匡は熱くなり始めた頭でそこに有正のメッセージを見た気がした。
彼は、これはいけないことだと頭ではちゃんとわかっていたのだ。
だから、願わくば誰かに気づいて欲しいと、そう期待してひそかに細工を残していった。
隙間から見える室内は静まりながら、確かに人の気配を感じる。
匡はそっとドアを押して中へと踏み込んだ。カーペットが足音を吸収してくれて助かる。
そのまま足音を殺して奥に進む。
依然として人の声はおろか、物音ひとつ聞こえてこない。隣の部屋から時おり喘ぎ声が洩れてくる程度だ。
やがて睦美の荷物が寝室に見えた。
しかし、乱れていないベッドメイクに匡は眉をひそめる。
思い切って寝室に飛び込むも、案の定、誰の姿もなかった。