まだあなたが好きみたい


叫ぶ彼を菜々子はまた一段と冷ややかに見返した。



いっそ蔑視と呼んでもいいくらいに。




「またその目だ!」




男は吠える。


犬?


いや、だったら犬に失礼だ。犬の知能指数をバカに出来ない。



菜々子は無言で彼を見つめた。


飽きない顔だとは思う。悔しいくらい。もうずっと見つめていたい。



けれど、そうおもうのとは裏腹に、ひどくむなしい失意にも似た絶望が押し寄せるのもまた事実だった。



どうして、とおもう。




なんで、こんなやつが好きなんだろう。




短気で、バカで、狭量で、何でも人のせいにしようとする情けない性格。



ちょっと顔が整ってるくらいじゃあ埋められない歪んだ彼の粗。



彼がそうだからわたしまでこんなにも嫌なヤツになるんだろうか。

普段なら決して口にしないような言葉が蜘蛛が糸を吐き出すみたいにするする出てきて、相手の顔色なんて全然気にならない。



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