まだあなたが好きみたい

箸を咥え、匡はふと考る。

そもそも睦美はいつ有正に惚れたのだろう。

以前、ファミレスで、吉田と有正が俺の悪口を言っているところを見たと教えてくれたことがあった。

睦美がバイトを始めたのは俺と別れた後だと口伝に聞いた。

偶然だとしても、場所は一緒で、有正の家もあの近くだ。まったく接点がなかったとは言い難い。

睦美の周辺を嗅ぎまわっていた眼鏡が彼女の異変に感づいて、有正を利用する計画を思いついたところからすべてがはじまった。

そのために、いつもつるんでいる吉田をターゲットに絞ったのだ。

彼女の過去を運よく知っていたことも、眼鏡を助けた。

だからこそ、なんとしてでも吉田と接点を得るため、彼女と仲のよかった東に近づいたのだとしたら。


匡にしてみれば気の遠くなるような手間だが、あれだけのことをやろうと思って手っ取り早い手段を模索すれば過去の俺たちのようになることは火を見るより明らかで、頭の切れる眼鏡なら考えるまでもなく候補からは除外するはずだった。

彼にとって、復讐のための時間と忍耐はすでに計画に織り込みずみだったにちがいない。



(罰が当たったのかもな)

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