まだあなたが好きみたい
それに、眼鏡はあまりに軽い口ぶりでたいしたことではないと言っていたが、人を脅してなにかをさせようとしている人間の言葉を鵜呑みにしていいはずがないと、ちょっと冷静になって考えてみればわかることなのに。
わかれたはずなのに。
(あのときのわたし、ほんとどうかしてた)
有正の苦しみを思うと、悔しくて、胸が爛れるように痛んだ。
「なにがあったの? 有正をこんなにして、許さないわ。学校に乗り込んででも眼鏡に目に物見せてやる」
「やめてよ」
何重にも重ねられた布団の下からふるえる指先が伸びる。
探るように菜々子の手を掴んだ有正の眼差しには鬼気迫る色があった。
「菜々ちゃんが、傷つかないなら、ぼくはそれでいいんだ。よかったんだよ」
「でもこんなに辛そうで、わたし、見ていられないわ」
あっという間にぬるくなってしまう額のタオルを冷やして載せなおす。
薬が切れてきたのだろうか。またすこし熱が上がったような気がして菜々子は心配になる。
「菜々ちゃん」
「なに? お腹空いたの? 何でも言って」