まだあなたが好きみたい
軋むような動作で寝返りを打って、有正は菜々子のほうへと向きを変えた。
元から美形なのが、熱があることで普段の三割り増しの色気を放出する。
だからこそ、菜々子の目には余計に儚く映った。
「何もいらない。あのね、菜々ちゃん。ぼく、これまでずっと、菜々ちゃんの弟みたいに守られてきた。ぼく、菜々ちゃんが大好きだから、菜々ちゃんに守られると、うれしかった。一緒にいてくれる菜々ちゃんが、頼もしくて、優しくて、ぼく、男の子なのに、後ろにいると、すごく安心できたんだ。だから、違和感を感じても、感じないようにしてきたんだ。……でも、わかったんだ」
有正、と菜々子は弟の頭に触れる。
脂っぽい髪の毛が症状の悪さを物語る。
菜々子は首を横に振った。
「風邪と関係ない話なら何も元気になってからでもいいでしょ」
「だめなんだ。今、言わなくっちゃ」
「有正」
熱い手。
割れた声を絞る有正は必死のそれで、菜々子は思うように強気に出られない。