まだあなたが好きみたい
すごい剣幕に、さすがの菜々子もこれにはひるんだ。
けれど、できるだけ虚勢を張って対峙する。
「そ、そんなこと言える立場じゃないで―――」
「立場じゃないって言いたいんだろわかってるよそんなこと! でもな、これはいくらなんでもあんまりだ。今日がどんな日だったか、おまえ、知ってるか、なあ? わかるだろ応援に来たんだったら。初日だぞ。俺の、俺の、高校の公式戦初日だったんだ。それがどんだけ大事でどれほど意味のあるものだったか、おまえにわかるのかよッ」
水に流せとは言わない。
それでも今日、この日に現れるのだけは、勘弁してほしかった。
地面を踏みしめ言う彼の言葉は切実な響きにふるえていた。
「俺の夏大、おまえのせいでモチベーションがた落ちだよ!」
ツバをまき散らす彼の、真の情熱に触れた菜々子はその瞬間、いきなり言葉を失った。